畑を自分で作り始めてもう3年目になる。たった30坪程度の僕の王国はいつもミラクルに溢れている。最近は僕のような気ままな王様にもしっかりと答えてくれるようになった。僕の場合、好きで畑の面倒みてるだけなので、効率や成果なんかぜんぜん気にしてない、ただの素人なの。ただ、ぼんやり眺めてるだけのぐうたらな、畑に胡坐をかいたずうずうしい王様。
さて、とは言え夏のあんまりひどい草の生え方に申し訳ないと思い、やっとこさきれいに草を引いたら、やはり僕の王国はたいしたもんで、小さな無数の国民(虫やら蛙やら)が出るわ出るわの大行進。と思ったら春に植えた夏野菜たちが今頃になって精力的に生産を始めた。ナスなんか今年はちっとも実をつけなかったので、王様もどうしたもんかと首をかしげた。ただ、葉っぱも茎も元気なので、まあいつものように黙ってみていたら・・・おやおや、今は生るは生るわのナスまみれ。ほんでもって、4月に巻いたニラは、芽を出したと思ったらあっという間に草に埋もれて一瞬で無くなったのに、今、ここん所の雨でまたグインと芽を出してきた。あんたら4月から今までどこで何しておったのですか?よく生きてたねえ、土の中で・・・。
僕の王国の場合、一般的な野菜の生産サイクルを無視した出来事がよく起きる。去年は春撒きのキャベツがぜんぜん大きくならず、苗のまんま夏を過ぎ、秋を過ぎ、冬になり・・・そしたら今年の春から夏にかけて大豊作になった。キャベツは越冬できるんだね。春に春キャベツじゃなく秋キャベツを食べるなんて、なんて贅沢なんだろう。
それに、数週間で大きくなるラディッシュをそのまま畑にほって置いたら、でこぼこのどす黒い変な小さなカブになった。生でかじったらとても辛くて喰えん。ところが煮てみたらなんとも美味な赤カブになった。きっと野生化したんだね。
面白いのは生姜で、今年初チャレンジ。草をひくと土の中から生姜のにおいがぷんぷん漂ってくるのには驚いた。ためしに一個抜いてみたら親指ほどの種生姜に小指ほどの新しょうがが付いていた。さっと洗ってかじったら、辛~い、けど旨~い。生姜は変わった植物で、種生姜は古生姜としてそのまま食べられる。芋なんかは種芋から養分を吸い取って芽が大きくなるから食べられないのになあ。生姜は二度美味しい、優れものなのね。
たった3年の王様生活で気付くことはホントに多い。僕達は旬を大切にしながら野菜を食べているのだけれど、この旬というやつも人間があてがったもので、本当の意味での自然のサイクルとはぜんぜん違うことに気付く。結局人間の都合の良いように作られただけなの。たとえば白菜も、白菜として食うより春になって菜花になった白菜の新芽の方がはるかに旨い。こりゃ白菜が旬なのか、菜花が旬なのか・・・。野菜は人間からすりゃ食い物だけど、植物の本質としては花を咲かせて種を付け、繁殖することだろうから、植物の旬と食い物としての旬は違うことになる。うーん・・・。
そんなこんなといろいろな気付きを与えてもらっていると、つい、収穫を忘れ、植物としての変化を見るのが楽しくなって、ミルク滴る採りたてのイチジクをかじりながら、今日もぐうたらとなんとなく小さな王国を眺めては、畑の王様はミラクルに心躍らせているのである。あ、ツバメが僕に白いお腹を見せて飛んでった・・・。
(みどりの屋根・INUUNIQ 飯尾裕光)
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