■ユースカンファレンス“Biodiversity on the Edge”の概要
2008年5月13日から19日の一週間、ドイツのボンのユースホステルを貸し切って、ユースカンファレンスが行われた。そのユースホステルは森に囲まれたとても素敵な建物で、一瞬で惚れてしまった。

会場となったボンユースホステル
参加者はだいたい30ヵ国から70人。アジア、ヨーロッパからの参加者が多く、アフリカからもいた。高校生から大学の博士課程の人まで、みんな個性豊かな人だった。そんなこと最終日の振り返りで話したら、「君も十分個性的だろ。あのKARAOKEはまだ僕の耳に残っているよ!」と言われてしまった(笑)。
プログラムは、ボンの市内散策、ボン市によるレセプションという緩い感じから始まって、メインはテーマごとの勉強会と、目玉企画であるユースの決議文書作成。
それと本プログラムではないものの、忘れてはいけないのは、ユースカンファレンス参加者も役を演じる参加型の劇や各国からの出し物などの交流とかエンターテイメント要素もふんだんに取り入れたれていた事。
そのエンターテイメント性も、みんなが仲良くなって、議論を円滑に進め、本音で語り合うためには重要だったと今になって思う。

交流タイムの様子
■ワークショップ(分科会)での議論
問題の勉強にもなったが、それだけではなく、人に難しいことを伝えるためのいろいろ手法を学ぶ良い機会となった。
ワークショップは、それぞれ3時間のプログラムで、8つあるテーマのうち、4つ選べるシステムになっていた。
8つのテーマは以下の通り
・気候変動と生物多様性
・生態系サービス
・森林の生物多様性
・農業と生物多様性
・遺伝資源へのアクセスと公正な利益配分(ABS)
・海洋の生物多様性
・生物多様性保全のための行動(アクション)
・プロジェクトの企画・運営
下の2つ以外は、どれも生物多様性条約で論点となっているイシューだ。
基本的には、外部の講師がいて、その人の話やワークを通じて、問題について学んだり議論したりすることで、理解を深めるのが目的。
僕が出たのは、「生態系サービス」と「遺伝資源へのアクセスと公正な利益配分」と「生物多様性保全のための行動(アクション)」の3つ。

参加したいワークショップの欄に名前を書く
◎ワークショップ(1)ABS
生物多様性条約の柱の一つが、ABSである。このABSとは、遺伝資源へのアクセスと利益配分(Access and Benefit Sharing)を指し、途上国の遺伝資源が不当な形で先進国に利用されているという、COPの最重要議題のひとつである。
“Biodiversity on the Edge”のメインコンテンツである勉強ワークショップでは、決議文書作成のため、生物多様性に関わるさまざまな問題をワークショップ形式で学んだ。
その中で、僕はABSのワークショップに参加した。
ここでABSの問題がどのような問題なのかを僕らに教えてくれたのはドイツのNGOである”EED” (Evangelischer Entwicklungsdienst)のMichael Frein さん。

説明をするFrein さん
彼はABSを専門に活動している人で、ワークショップ中も記者からの電話で彼の携帯電話がなりっぱなしだった程、重要な人だ。
彼から聞いた話は、私たち先進国の市民が、知らず知らずのうちに、他国の人たちの権利侵害に加担しているかもしれないという事実だった。
ABSは、簡単に「遺伝資源へのアクセスと利益配分」と訳されるが、これだけではその意味が正確に理解できない。実はABSは正式には以下のように言う。
「遺伝資源へのアクセスとその利用から生じる利益の公正で公平な配分」
現時点では、遺伝資源の越境的な利用に関する国際的なルールはない。それがゆえに、問題が生じている。
例えば、ある国の企業が他国で得た植物や動物の成分とその伝統的な薬用法を利用して、薬などを作ったとする。そしてその薬を販売して利益を上げる。しかし、製薬の際に、原産国の資源やその伝統的な知識を利用したにも関わらず、企業が得た利益は原産国や地域住民に全く還元されないことが多い。それどころか、企業がその薬品に特許を取得し、伝統的に利用していた原産国で自由に利用することができなくなってしまうという問題さえ発生しているという。
この問題を受けて、遺伝資源へのアクセスと利益配分に関する国際的なルールを定めようという大きな動きがある。これは生物多様性条約の中で、議論されているのだ。
しかし、議論の進行状況は芳しくない。実は、カナダ、日本を筆頭に、ニュージーランドやオーストラリアなどが、法的な拘束力のあるルールづくりに反対をしていて、枠組みづくりが難航している、とフラインさんは話した。
僕は、世界で遺伝資源から得られる利益を、しっかり配分しようという動きがあったことに感心したのと同時に、その動きを日本が阻害していることにショックと申し訳なさを覚えた。
○ワークショップ(2):生態系サービス
生態系サービスも、生物多様性がなぜ大切なのかを理解する上で、欠かせない概念だ。
この分科会は、生態系サービスの説明から始まった。
生態系サービスとは、生態系(種や遺伝子も含む)が、人間にもたらす恵みのことで、実際のモノだったり、モノじゃないものも含まれる。
例えば、人間に必須な食べ物は生き物だし、服も麻や綿などからできている。家を建てるのにも木を使う。いまはそうじゃないものもあるけど、長い期間、木材や時にはわらとかを使って家を建てた。
モノに限らず、山に木があることで、土砂崩れが起きにくくなったり、洪水が起きにくくなっている。
インドネシアで津波があったときも、マングローブがあったところには津波の被害がすくなかった。
森は、雨水を飲める水にしてくれるし、酸素をつくる。薬草や熊の胆のように、植物や動物が薬にもなる。
こういった、いろいろな生き物や生態系からの恵みを総じて、生態系セービスと呼ぶ。
この生態系サービスと生物多様性とは、何の関係があるのだろうか?
そう、生物多様性を保全するひとつの理由が、この人間の生存・生活に必要不可欠な生態系サービスを持続的に得ていくことなのだ。
こんな説明があったあと、理解を深めるために、写真クイズを行った。プロジェクターで、写真を映しだして、その場面からどのような生態系サービスが読み取れるか当てるクイズだ。

生態系サービスクイズ
例えば海岸の写真が映し出され、そこからどんな生態系サービスが読み取れるかというクイズだ。
ある人は海の魚は食料になる、という。
ある人は海岸にある木々を指して、防砂林としての役割を果たす、という。
海はきれいだし遊んで楽しいから、観光としての価値があるという人もいた。
このように、次々と出される写真について、参加者が気づいた生態系サービスをどんどん言っていくことで、「あ、そんなことも自然から恩恵をうけているんだな」と気づく。
さらにこのクイズの後、ワークショップの参加者は2つのグループに分かれてカメラを渡された。「では、これからさっきのような生態系サービスの写真を撮ってきてください」と説明された。
参加者は、今度は自分たちで生態系サービスについて考えながら、動く。
そして、写真を撮り終ったら、プロジェクターで映しだして、それぞれのグループが撮った写真の説明をする。
生き物からの恵みは、いざ考えてみると、なかなか思いつかないものだが、クイズ形式で楽しく、しかも多人数で学び合いながらでき、かつ自分でも考えて写真を撮るのでので、生態系サービスについて理解を深めるうまい手法だと感じた。(つづく)
(A SEED JAPAN 林雄太)
















