映画『黄金花 -秘すれば花、死すれば蝶-』が名演小劇場で上映中です。この映画は、鈴木清順、熊井啓、黒木和雄など日本を代表する名監督との仕事で世界的に名高い美術監督である木村威夫監督作品です。
全国各都市で絶賛上映中ですが、名古屋では名演小劇場で2009年12月5日(土)から12月25日まで上映しています(配給:太奏©PROJECT LAMU/UZUMASA)。
木村監督は御年91歳! 70歳の時インドの占い師に「あなたの人生は85歳で変わるよ」と言われたそうですが、その通り、85歳で実写短編映画監督デビューとなったそうです。2008年に「夢のまにまに」では、世界最高齢長編映画監督デビューとして、ギネスに認定されています。今回は、長編第2弾作品となります。

舞台挨拶する木村威夫監督
映画の舞台は、老人ホーム「浴陽荘」。そこには植物学者の牧草太郎博士はじめ、物理学者、役者、自称映画女優、バーのママ、板前、質屋、などなど多くの孤独な老人が身を寄せている。老人達は人生を邂逅し、尽きせぬ想いと死への恐れに打ち震えながら、それぞれが作り上げた物語の登場人物を演じることで嘘とも本当ともつかぬ奇妙で不思議な日々を送っていた...。
物語は、牧博士が偶然、長年探し続けてきた「黄金花」を見つけるところから始まる。封印したはずの記憶の断片、少年時代の母への想い、青年時代の留学生の若き恋人への切ない思いと永遠の別れ、が押し寄せてくる中、彼は時の川を遡り人生の最期の旅に出る。
この物語は、脅威のファンタジーと言えます。失礼ですが、とても91歳になる方の作品とは思えません。それほどに“若く”斬新な”映画であり、映像です。79分間、一気に見ることができました。監督もおっしゃっていましたが、「歯切れ良い」テンポに仕上がっており、間延びしていないのですね。「3ヶ月間、編集に費やした」のは、成功していると思います。
冒頭、熊野の奥深い山並みから映画はスタートします。続いて、老人ホームへと画面は写りますが、その際、煙突から灰が上るシーンが差し込まれています。そしてラストの“生”(具体的には、映画を見てください)。物語の初めと終りで、生と死をうまく象徴的に描いています。
それだけでなく、映画は全編が“象徴”に満ち満ちています。行者が杖を大地に打ちつける。「全てが地球の中心に立っている」ことの象徴。黒いビニールとアメリカ国旗で、ヒロシマへの思いを象徴。過去愛した女性の横たわる遺骸の腹部におかれた能面。弥勒菩薩、インドの聖女。そして映画のタイトルでもある、黄金花。
これは、ソーマだ(興味ある方は何かで調べてください)。記者はそう思いました。誰もが捜し求める、不老不死の花、神々の霊薬。
青年は牧博士に言います。「人は死ぬ。だから良いのではないでしょうか」この言葉により、牧博士は、不老不死の妄執から逃れることが出来たのでしょう。「そうかもしれんな...」妄執から逃れ、もう一度向き合うため、彼は人生最後の旅に出ます。そして...。
死は悲しむものではない。死は生である。新たな命である。映画を見ていて、こんな言葉がずっと浮かんでいました。「枯れ木に花を咲かせましょう」木村監督の正体は“花咲か爺さん”である。そう確信しています。
さて、幾つか木村監督にお聞きしているので、その内容を以下に報告しておきます。
取材の様子はこちらをご参照下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=Kwuam8-KinI
http://www.youtube.com/watch?v=02VLDoh9v0o
http://www.youtube.com/watch?v=p73HkaGZppI
(高須)映画製作について。
(監督)この映画では、1930年代の、サイレント映画の画面を追求した。セリフは極力削り、絵と絵のつながりを重要視した。3ヶ月、編集に費やした。芸術上重要な時間だった。捨てるコマ、拾うコマ。色々あった。俳優には、試写で初めて見てもらった。それでようやく納得してもらった。
この映画では、新しい手法を試みた。先達によって映画は完成している。その後塵を拝するのはイヤなので、全く違うものを作りたかった。たとえて言うなら「連句」。インドの聖女、ピーナッツ老人、等々一見関連性のないものをつなげる。「回転舞台」と呼んでいるが、1つのセットを区切り、違うシーンをつなげる試みもしている。ちなみにここで使用したビニールの世界は、当初全く違うことを考えていたのだが、ある日突然「違うことをやりたい」と思い実行した。これは自分で脚本も書いているからできることだった。
(高須)日本映画について。
(監督)お金かけた作品色々出ている。それもいいが、一人くらいアートを追及する監督がいても良い。商品映画ではない。客が来なくても良い。そういう映画を撮る監督がね。
(高須)映画製作にスタッフとして参加した京都造形芸術大学の学生について。(監督)反応が早かったので、楽しかった。自分が若い頃は、芸術だ何だと言っていられる時代ではなかった。その頃と比べると「悩みがない」とう。「焦点が定まっていない」とも思うね。ちなみに。現代は“青年の老人”が多い。外見は老人でも、心は若い。私なんかは、還暦で0歳宣言したほどだ(笑)。
(高須)次回作について。
(監督)来年早々、短編映画制作がスタートすると思う。スケッチした人物が動き出す、というようなもので、15分から20分程度の作品。長編については、色々と動こうとしているところ。過去の世界が現代によみがえるような内容をイメージしているが、どうなるかはまだわからない。
名演小劇場で2009年12月12日(土)から12月25日まで上映しているので、興味ある方はぜひ劇場に足を運んでください。
(高須健一)
黄金花:http://www.airplanelabel.com/ougonka/
名演小劇場:http://homepage3.nifty.com/meien/schedule.htm
■監督:木村威夫(きむら・たけお) 1918年4月1日生まれ。1941年に日活に入社後、美術監督作品は200本を超える日本を代表する美術監督。『海を呼ぶ声』(1945)で美術監督としてデビューし、鈴木清順監督の『けんかえれじい』(1966)、『東京流れ者』(1966)、『肉体の門』(1964)『ツィゴイネルワイゼン』(1980)等の他に、伊丹十三監督『タンポポ』(1985)、篠田正浩監督『少年時代』(1990)、熊井啓監督『千利休・本覚坊遺文』(1989)、『深い河』(1995)、林海象監督『夢見るように眠りたい』(1986)等を担当。近年では、鈴木清順監督『ピストルオペラ』(2001)、熊井啓監督『日本の黒い夏-冤罪-』(2002)、『海は見ていた』(2002)、山田勇男監督『蒸発旅日記』(2003)、水野晴郎監督『シベリア超特急3』(2003)、黒木和雄監督『父と暮らせば』(2004)等。鈴木清順監督の『オペレッタ狸御殿』(2005)ではプロダクションデザイナー。『夢幻彷徨 MUGEN- SASURAI』(2004)が初監督作品。この作品は『蒸発旅日記』のスタッフが中心となり製作、木村威夫の戦争体験が色濃く反映されたアヴァンギャルドな映画として注目を集めた。その後、伝説的ロックバンド『キャロル』のギタリストだった内海利勝の楽曲『街』をモチーフにした短編映画『街』(2004)を監督。2006年には『OLD SALMON 海をみつめて過ぎた時間』を監督。この作品は自身の詩がモチーフになっており、シャ ンソン歌手深緑夏代が出演した事でも話題になった。2007年には『馬頭琴夜想曲』を監督。特別出演として、鈴木清順、山口小夜子が参加している。2008年には初の劇場長編『夢のまにまに』を監督している。
なお、本作は2008年11月、名演小劇場で上映された。

























