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生物多様性の保全に向けての市民戦略を考える―その2
(2008年6月24日 09:00)

2008年6月8日に行われた「生物多様性の保全に向けての市民戦略を考える」と題したシンポジウム。今回は、ドイツのボンで5月末に開催されたCOP9(生物多様性条約第9回締約国会議)を視察したNGOのメンバーと、参加者との意見交換を中心にレポートする。

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 左から市野和夫さん、今村和志さん、杉本正次さん、市川守弘さん

参加者の一人、曽我部行子さんは言う。「COP9が始まる前は高揚感があったのですが、仲間が帰国してからは、COP10を愛知・名古屋で開催することに対する重圧感が重くのしかかり、ホストとしてとても受けとめられないというような思いが広がっています」

この言葉の背景には、COP9でのこんな出来事があった。日本の経済産業省は、カルタヘナ議定書会合にて遺伝子資源の配分の問題で、途上国への利益還元案に同意せず、自発的なガイドライン案を支持した。結果、期待された成果を大きく後退させてしまったのだ。その行為に失望した各国のNGOは共同でこんなメッセージのビラを作成し配った。「名古屋だけには議長国をやらせたくない!」COP10が内定していた名古屋、すなわち日本に向けての抗議だった。 

ボンからのメールでこのことを知った曽我部さんは内心、「困った経産省ね」と思ったそうだが、海外のNGOたちの言い分に、たじろいだ。「日本の経産省は去年の12月にこのコメントを出しているのに、これまで日本のNGOは何をしてきたのか?」何もしなかったではないか!と。

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 生物多様性について語る生産農家の参加者

日本でのNGOの立場は、行政と対等に議論しあう欧米のNGOに較べると驚くほど弱い。少しずつ認知され、財団などの運営も代理で任されるようになったとはいえ、まだまだ“ボランティア”としての位置づけが濃い。曽我部さんは自分たちが井の中の蛙だったことを思い知らされる。外国から見れば、行政もNGOも一体、いわゆるオールジャパンとみなされる。「それは、あなたたち国内の問題でしょ!」と。そこでは、環境省や経産省など、各省庁の利害の違いから生じる、日本の縦割り行政のひずみを嘆くことは通用しない。  

「でも、まだ2年あるので、いろいろなことができるはず」と、力をこめた。万博会場の計画変更のため、あの手この手を駆使し、海上の森を守った。今も森の保全活動を続け、2010年のCOP10で、地元として海外のNGOの受け皿になろうと、さまざまな立場の仲間とNGO『生物多様性フォーラム』を立ち上げた曽我部さん。名古屋初の本格的な国際会議を市民の立場で成功させることが、NGOの底上げになると信じている。

中部の環境を考える会の石原陽一さんは、「遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)についても今回大きな決定はなかった。全部の問題が2年後のCOP10で採決されることになる。とんでもない国際会議が2年後に来るという思いが帰国後ジワジワと押し寄せている」と語る。

地域国際活動研究センターの杉本正次さんは「ウミガメや森の保全のことは本会議でほとんど議論されていない。食料危機やバイオ燃料の話がメインで、ほとんどが政策がらみだ。市民の考える生物多様性問題と大きな乖離を感じた」と語る。 

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 籠橋隆明さん

表浜ネットワークの今村和志さんは、「東海地方ではNGO間 のネットワークが弱い。2年かけて強化していきたいと思っている」と。六条潟と三河湾を守る会の市野和夫さんは、「自然の持続性を壊してしまったら、経済性なんて無くなる。世界の市民に、COP10の開催地で起こっている負の現実についても知ってもらうように情報発信していきたい」と述べた。

他の参加者からも「市民団体は今までは行政と対立する関係だったが、これからは行政と協働でどう課題を解決していくかが重要」、「ボンでは会期中、NGOのための部屋がきちんと用意されていた。名古屋ではボン以上に他国のNGOをあたたかく受け入れたい」、「行政もCOP10を迎えるということで、生物多様性にきちんと向き合わなければならない。理屈の通らない開発に対してはきちんと責任を求めていくことができる」、「国際会議として浮かれるのではなく、受け入れる側の我々市民も緊張感を持つ必要がある」などの熱のある意見や決意が聞かれた。

地元名古屋の環境法律家、籠橋隆明さんは「日本の生物多様性がいかに悲惨な状況にあるかをアピールしたい。真実が世論を動かしていく。世論が動けば政治も動く。生物多様性条約として、法的拘束力をどこまで浸透させられるかが課題」と語る。

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 市川利美さん  

北海道から参加した市川利美さんの言葉は、日本における生物多様性の広がりを決定づけるものだ。「地元の市民がどんな使命を担うことになるのか興味がある。名古屋の皆さんがこれから全国に向けて何をやってくださるのかな?と期待している。それが全国に結びつくとすごいことになっていくと思う」。

(浜村良子) 

<関連記事>
・生物多様性の保全に向けての市民戦略を考える―その1

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