最近多くのスーパーマーケットの売り場で見かけることが多くなった「フェアトレードコーヒー」。以前に比べるとオーガニックコーヒーやフェアトレードコーヒーを気軽に飲める店も増え、注目が高まってきている。しかし一方で映画『おいしいコーヒーの真実』で語られているように、大手企業の市場独占のもと、貧困に苦しむコーヒー農園が少なくないのが現実だ。また毎日コーヒーを消費する私たちが、フェアトレードがもたらす影響をどれだけ理解するかということも重要な問題だ。
そんななかエクアドルのインタグ地方で、「子どもたちにきれいな川や森をのこしたい」という思いから、20年間フェアトレード無農薬コーヒー作りにこだわり続ける、コーヒー生産者カルロス・ソリージャさんが来日。カルロスさんが作ったコーヒーを販売する有限会社スロー代表小澤陽祐さんとの『LOHASな夕べ~森を守った男』のトークイベントが、6月12日東京有楽町にある「丸の内さえずり館」で行われた。主催は1999年よりフェアトレードやエコツアーを通し、中南米エクアドルを中心に、世界の環境活動支援を行うNGO『ナマケモノ倶楽部』。
南米エクアドル、インタグ地方。赤道を意味する名前をもつこの地域では、雨が多く豊かな森が広がっている。標高2,000メートルの山々は見渡すばかりの雲霧林。常に霧が発生しているため、さまざまな動植物が生息するのに適している。そのため生物の多様性が豊かな地域として知られている。しかし近年は、地下資源の発掘にまつわる開発などにより、生物多様性が失われる危険にさらされており、国際NGOが発表するホットスポットにも指定されている地域だ。
「コーヒーも生物多様性の一部」、そう語るカルロス・ソリージャさん。そのためこのインタグ地方では、今までの常識を覆す栽培方法でコーヒーを生産している。それが「日陰栽培」のコーヒーだ。
一般的に私たちがコーヒー農園と聞いて頭に思い浮かべるのは、太陽が照りつけるなかで、あたり一面いっぱいにコーヒーの木が広がる、そんな風景ではないだろうか。しかしこの「日陰栽培」は、森の木や植物を伐採することなく栽培するため、大きな木やそれに絡みつく植物により、日があまり当たらない場所でコーヒーの木を育てることになる。これは森の資源、いわゆる生物多様性を守るのに、とても重要な栽培方法で、太陽が多く当たらないことで一見マイナスなイメージを持つが、湿地がふえることで多くの植物の生息し、その植物を求め多くの動物がやってくるため、森の中の食物連鎖の循環が守られ、肥沃な土地、生物の多様性のパラダイスを作りだしているのだ。また収穫されるコーヒー豆も、ゆっくりと時間をかけて栽培されるため、質が良く味の濃いものが出来るという。
「フェアトレードの意味、これは価格の公正な取引や労働者の環境条件などほかに、もう一つ、地球の環境を守るという大前提があります。このことを抜きにしてフェアトレードの意義はなしえないと思う」そう語るカルロスさん。「この日陰栽培におけるコーヒー生産を、インタグ地方におけるオルタナティブビジネスのサクセスストーリーにしたいと思います。そして今後若者がこのようなビジネスモデルを歩む道を作りたいと思っています。」
またスローコーヒーの小澤さんも、実際にインタグの森を訪れ感じたのは、地元にとって持続可能な状態が息づいているということ。「いま企業の環境対策として必ず話しに出てくる、カーボンオフセット。インタグでは森の中にコーヒーの木を植えているので、オフセットする必要もない。まさに豊かな自然と共生するオルタナティブビジネスモデルです。」
そして今後インタグでは独自のフェアトレードラベルを作る動きも出てきているようだ。「いままでは先進国など、フェアトレード商品消費国によってフェアトレードの基準が定められてきました。しかし今後は生産する側がさらによりよい商品を提供するために、基準を定める提案をしていくことが重要だと考えています。」他にも9月にはナマケモノ倶楽部の主催で、インタグへのエコツアーも実施予定。
一杯のコーヒーのもつ意味を、改めて考えさせられた「日陰栽培」。自分たちの土地や文化を大切にする暮らし、それが持続可能な社会を作るのだろう。
(蛭田有里子)




















