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「宣言」と「変革」で環境への負荷削減に挑む – INAX社長・川本隆一さん
(2008年5月12日 13:45)

20083月にINAX新『環境宣言』で、衝撃的ともいえる「2050年にCO2総排出量90年比80%削減」を発表した株式会社INAX。「社会に対して80%削減と宣言するわけですから、いくら42年後といっても無責任なことは言えない」とおっしゃる社長の川本隆一さんに詳しいお話をうかがいました。 

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             株式会社INAX社長 川本隆一さん

2050年とは、ずいぶん未来のことですが。 

当社は環境問題を早くから経営の重要な中心課題に位置付けており、1992年に第一次環境宣言を表明して以来、できる限りの努力を続けています。地球環境の悪化が深刻さを増している中で、「より踏み込んだ環境保全に対する考え方、哲学を持って今後の企業活動を進めていくべきだ」という意見が当時の環境戦略部(現サステナブル・イノベーション部)から出てきました。長期的な視野にたって、あるべき目標をたて、技術革新をし、時には社会革新をしながら目標到達への道筋をきちんと計画していくということが、当社にとって必要な時期にきていると考えたわけです。 

経済や社会変動の激しい時代に、40年以上も先の地球環境を一企業として真摯に考えられる理由は? 

公的な会社となって84年。その原点は、「企業は社会の公器である」という思いです。当社の企業理念に「INAX5」があり、その中の「X2」は、「環境美を創造し提供する」というものです。つまり、人々の暮らしの中心となる住宅環境や、街の環境、社会環境、これらを美しくしていくことが当社の事業領域である。その住宅や社会環境の先にあるのが、自然環境です。従って、当社が事業を進めていくということは、必然的に持続可能な社会を作っていくということ。これから離れての事業活動はあり得ません。 

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  2050年にCO2総排出量90年比80%削減を宣言した川本社長

経済活動と環境重視策が相反し、理念が形骸化してしまうケースも多々見られますが、1990年比の20%しかCO2を排出しないという具体的な施策を教えてください。 

京都議定書の内容に沿って、90年比でCO2排出を17%削減しようと努めてきましたが、結果は残念ながら14%留まりでした。省エネ内容は改善したのですが、企業活動の拡大に伴い総量が増えたので、目標未達成となりました。そこで、現在の技術力でどこまでできるかという挑戦ではなく、自らイノベーション(変革)を起こしていこうと決意したわけです。 

一つは窯の構造に着目します。セラミックタイルや衛生陶器など多くの製品を窯で焼いていますが、実際には窯を加熱するエネルギーの10%しか焼成に使用せず、残りの90%が大気中に放散しています。そこで、熱損失の大きい現在の窯の構造を、外気にエネルギーが漏れないような、熱効率や断熱性の高い、省エネタイプにできないか研究中です。また、電子レンジのマイクロウエイブ波のように、製品だけ熱するという案もでています。無駄なエネルギーを削減しようと真剣に考えれば、イノベーションの種はいくつもあると確信しています。

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    エネルギーの90%が大気中に放散している現在の窯

製造工程(つくる時)におけるイノベーションですね。他には何かありますか? 

現在、生産現場で使用している熱源エネルギーは化石燃料です。これを企業の自助努力で太陽光や風力発電などの自然エネルギーに転換できないかと思案しています。エネルギーの供給主体がCO2を削減してくれるのを待つというだけでは、当社の掲げる目標を達成することは難しい。逆に、こちらから地方自治体に働きかけて風力発電の設備を持ちましょう、あるいは電力会社にアプローチして共同でやりませんか、など、当社の社会的使命に合致するのであれば、そういった分野にも投資をしていく考えはあります。長期的に努力をすれば、必ず経済性も伴ってくると信じています。ヨーロッパではすでに民間会社による経済活動の一環として風力発電事業が行われていますから。 

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  旧来型便器に比べ洗浄に使う水を約60%も節水したトイレ

 ― 地球環境に負荷をかけないものづくりを追求してこられましたが、製品(使うとき)におけるイノベーションにはどんなものがありますか?超節水トイレの先にあるものは? 

 企業サイドでは技術革新によってCO2削減など環境対策は進んでいるのですが、個人の生活レベルではエネルギーの使用量が増え続けています。一般家庭で使用するエネルギーは、給湯で約30%、水使用で約30%、残りは空調関係といわれており、6割近いエネルギー分野に当社の事業活動が関わっていることになります。製造工程のみならず、消費者のライフスタイルにおいても、環境負荷削減を追求していくという社会的使命があると認識しています。 

一例として、「たっぷり感、ゆったり感を維持したまま、入浴時の湯量を10リットルに」というアイディアの実現を模索中です。入浴時に使用するお湯の量は、平均で200リットル。それを10リットルにするために、浴槽をせっけんフォームのように細かな、しかも温かく肌触りもいい泡で埋め尽くすことを考えています。欧米のバブルバスとは全く違い、お湯でなく泡で入浴するというもので、お湯より魅力的な入浴感を目指しています。 

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湯量を200リットルから10リットルにする超節水風呂を開発中

お風呂好きの日本人ならではのアイディアですね。海外でも今ごろになってシャワートイレが話題となり、日本人特有の着眼点や精神性が注目されています。 

より良きコトをしたい、精神的に美しく暮らしたい、地球に大きな負荷をかけてわがまま言いたくないという文化的側面が世界的に強まっています。日本人にはもともと江戸時代に育まれた、「美しく端正に、しかも慎ましく暮らす」という文化が根底にまだあります。便利になるのなら多少エネルギーを使ってもしかたない、という少し前の考えは、文化的にいうと粗いというか、雑な気がします。日本人のDNAを呼び覚まし、上質な文化に支えられた技術を生かす世の中に変わっていけば、持続可能な社会に向かっていくのでは。当社も1992年の産業廃棄物ゼロ目標を実現し、日本人のリサイクル(もったいない)の思想を追求し続けています。 

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    生物多様性COP10への取り組みを語る川本社長

地球温暖化問題と並んで重要な、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が愛知・名古屋に内定しました。これについては、どんな取り組みをされますか? 

具体的な取り組みはまだこれからですが、企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)に加入し、企業が主導権をとって生物多様性について何ができるか、他社と勉強会を重ねています。最近では、当社の事業所のある愛知県の「海上の森」と、三重県の「伊賀上野モクモクファーム」の里山を保全する活動を、自治体や市民の方々と協働で始めたところです。

最後に、業績拡大の背景には、環境問題に真正面から取り組んでおられる企業姿勢を消費者が支持している、ということも実感としておありですか? 

環境への取り組みが購買要因に直結する、というような簡単な話ではありません。当社はいち早く環境問題に取り組み、世の中に宣言することで、企業活動が環境により良く変わっていくという強い信念を、経営の礎としてきました。あたり前の企業哲学ですが、企業がもうけなければいけないというのは、永続するために利益が要るわけで、そのためには、社会にとって何ができるかという本質をしっかり考えることが必要です。同じ意味で、企業が存続するためには、その社会環境、自然環境にとって何ができるかを追究することが、長期的にみれば企業発展の理(ことわり)であって、そこをはずれて長く繁栄する社会も企業もないのではないか、そういうふうに思いますね。 

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       本社屋に掲げられたエコのマーク

環境への取り組み、そして企業理念を語る上で、気負いもなければいささかのブレもなく、穏やかに丁寧におはなしくださった川本さん。本社屋のエントランスに高く掲げられた、エコを表わす緑色のロゴマークは、INAX社員の方々の環境に対する決意の表れのようでもあり、環境への活動をやさしく見守る地球の分身のようにも思えました。

(記事:浜村良子 写真:伊藤剛) 

[関連記事] 

企業活動に生物多様性保全は必須:http://goodnews-japan.net/news/cop10/2008/02/22/197

企業が連携して生物多様性に取り組もう:http://goodnews-japan.net/news/cop10/2008/04/05/231 

[関連サイト] 

株式会社INAXhttp://www.inax.co.jp/company/vision/ 

生物多様性と企業イニシアティブ(JBIB):http://www.jbib.org/ 

COP10を愛知・名古屋で開催しよう:http://www.cop10.jp/aichi-nagoya/cop/index.html

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  • [...] 「森でeこと(イイコト)」と名付けられたこの活動は、あいち海上の森センターと海上の森保全で企業連携した株式会社INAX(社長:川本隆一さん)の社員やその家族およそ50名が2008年5月24日(土)、下草刈りや間伐作業を行ったものです。ヘルメットと軍手姿の社員らは、NPO「海上の森の会」(会長:山川一年さん)会員の指導のもとで熱心に作業を行いました。 [...]
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